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糖尿病と眼の症状

 最近の厚生労働省の「糖尿病実態調査」によると、糖尿病が強く疑われる人は820万人と推定され、これらの人のうち治療を受けている人は約半数にすぎないという結果が報告されました。糖尿病の3大合併症は腎症じんしょう、神経障害、網膜症もうまくしょうですが、失明につながる網膜症は最も悲惨な合併症とされています。ヒトでは情報の約80%が視覚から得られているといわれ、この視覚を失うことはその人の生活の質(QOL)を著しく損ねることになります。

 糖尿病網膜症は日本での失明の大きな原因になっています。これは、糖尿病網膜症はある程度まで進行すると完全に治すことができないことや、治療が手遅れになるまで放置されていることが原因です。したがって私たちは糖尿病と糖尿病眼合併症の恐ろしさについてもっと知識を得て、それらに対処する必要があります。

 糖尿病眼合併症には網膜症、白内障はくないしょう緑内障りょくないしょう、ぶどう膜炎、視神経症、外眼筋麻痺がいがんきんまひ、屈折調節障害など、さまざまなものがあります。このなかで最も多くみられるのは網膜症と白内障です。白内障は視力低下に先立ち“まぶしい”“かすむ”などの自覚症状が出てくるので早い時期に患者さん自身が気づくことが多くあります。また白内障は進行して視力の低下を来したとしても、白内障手術により視力の回復が得られます。

 しかし網膜症は視力低下を自覚した段階ではすでに増殖糖尿病網膜症になっていることが多く、最悪の場合は血管新生緑内障けっかんしんせいりょくないしょうも合併して、網膜レーザー光凝固ひかりぎょうこ硝子体しょうしたい手術にも反応しないようになります。ごく初期の状態以外では、血糖コントロールを改善しても網膜症は改善しないことが厄介なところです。網膜症はあくまで発症予防が大切で、また不幸にして網膜症が発症したら適切な時期にレーザー治療を受けることが、失明予防という観点からは重要です。

 したがって糖尿病と診断されたら、眼の自覚症状がなくても必ず眼科を受診してください。内科と眼科での定期的な通院治療が不可欠で、さらに、患者さん自身の自己管理が、糖尿病網膜症による失明を防ぐ意味で最も大切です。


執筆者(敬称略):梯彰弘

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出典:六訂版 家庭医学大全科

発行:株式会社法研

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