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腫瘍とは、がんとは何か

 腫瘍とはいったいどんなものでしょうか? 1999年に三省堂から出版された『新辞林』を引いてみると、「体内で周辺組織と無関係に過剰な増殖を行う細胞の塊。良性と悪性に分けられる」と記載してあります。わかったようなわからないような気がします。

 たとえば、いぼやほくろを例にとれば理解しやすいかもしれません。これらは皮膚にできた腫瘍です。がんのように急速に大きくなったり、他の臓器に飛び散ったりすることはない良性のものではありますが、それでも、生まれたてのころからできていることはまれで、人生のある時期にでき、長い時間をかけて少しずつ大きくなっていくものです。

 しかし、正常な皮膚とはまったく様相が異なっており、平坦な皮膚組織から盛り上がるように飛び出しています。色や表面の性状も、正常とは異なっています。これを顕微鏡で細かに見てみると、細胞そのものの数が増えていることがわかります。

 最近の学問の発展に伴い、腫瘍は遺伝子異常の病気であることが明らかにされるようになり、その定義のしかたも様変わりしてきました。すなわち、「腫瘍とは細胞の遺伝子の病気であり、細胞に複数の遺伝子異常が生じた結果として、異常な増殖、浸潤しんじゅんや転移を来す疾患」というような定義がされるようになりました。

 もう少しわかりやすくいうと、遺伝子の異常が積もり積もったために、まわりの細胞や体の組織を無視して勝手気ままに大きくなったり、他の臓器へ飛び散っていく病気、という意味になります。

 腫瘍は、良性のものと悪性のもの(がん)に分けられます。良性の腫瘍の代表的なものは、先ほど例にあげたいぼやほくろです。少しずつ大きくはなりますが、放っておいても大きな問題になることはあまりありません。これに対して、悪性の腫瘍は「がん」と呼ばれ、死につながる病気として恐れ嫌われる存在になっています。

●がんと癌

 日本人の死因のなかで最も多い病気はがんです。できる場所によってがんにはいろいろな種類がありますが、悪性の病気全般を指す時に「がん」という言葉を使います。そのうち、上皮細胞が悪性化したものを「癌」と漢字で表します。

 上皮細胞とは文字どおり、体の表面をおおう細胞のことです。体の表面をおおうというと皮膚がこれにあたるわけですが、実は口のなかから食道、胃、腸に至る消化管や気管支や肺も外界と直接つながっており、食べ物や空気が直接触れる場所でもあります。これらの臓器は表面を粘膜でおおわれていますが、解剖学的には、粘膜も体の表面をおおうものであり、これも上皮の一部です。

 したがって、食道、胃腸や気管支の上皮から発生した悪性腫瘍は、食道癌、胃癌、大腸癌、肺癌などというように漢字で表されます。これに対して、体の表面を直接おおっていない部位からできた悪性腫瘍というと、血液から発生する白血病や骨由来の骨肉腫などが代表的なものになります。

●がんの特徴

 がんにはいくつかの特徴があります。

(1)自律性増殖

 人体は、生命を維持するためにいろいろな調節機構を備えています。育ち盛りの子どもでも、必ずある時期に成長が止まります。身長の高い低いはあっても、3mもあるような巨人はいません。同じように、眉毛がどんなに伸びてもあごにまで届くことがないことや、唇を作っている細胞が外側に広がって顔中が唇になるようなことがないのも、そのような調節機構がはたらいているからです。

 しかし、がん細胞は人体の正常な調節を無視して勝手に増殖を続け、とどまることがありません。これを自律性増殖と呼びます。

(2)浸潤と転移

 がん細胞は、周囲の正常な細胞を壊したり、圧迫しながら周辺に広がったり(浸潤)、リンパ管や血管を通じて体のあちこちに飛び火(転移)します。ある一定の範囲内にがんがおさまっていれば、手術をして完全に取り除くことができます。しかし、浸潤したり他の臓器へ転移していると、手術をしても取り切れないことになり、完全に治すことが極めて難しくなります。

(3)悪液質

 がん組織は他の正常組織の栄養をどんどん取り込むので、体重が減り体が衰弱します。また、がん細胞自身が、やせて衰弱するような物質の産生を刺激することもあります。


執筆者(敬称略):中西洋一

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出典:六訂版 家庭医学大全科

発行:株式会社法研

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