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ベーチェットびょう

Behcet's disease

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どんな病気か

 べーチェット病は主に眼、皮膚粘膜に急性の炎症発作を繰り返す原因不明の病気です。世界的には、シルクロード沿いの地域に患者数が多く、日本では北日本に患者が多く分布します。患者数は2万人弱で、男女比は1対1、好発年齢は20~40歳です。



原因は何か

 原因は不明ですが、遺伝的な要因(体質)と環境因子の両者が関係しています。遺伝的要因で重要なのはHLA‐B51です。ヒト白血球抗原(組織適応抗原)であるHLAのうちB51をもっている日本人の一般的割合は10~15%ですが、べーチェット病患者では50~60%と非常に高い割合になっています。

 環境因子では細菌抗原である熱ショック蛋白に対する異常な免疫応答により、TNFαアルファの炎症を促進するサイトカインの生成過剰や好中球こうちゅうきゅうの機能亢進が起きると考えられています。


症状の現れ方

 口腔内アフタ、皮膚・眼症状、陰部潰瘍が発作的に起き、繰り返しますが、発作と発作の間欠期は無症状です。口腔内アフタは初発症状であることが多く、きょう粘膜、舌、口唇、歯肉に痛みのある潰瘍が繰り返しできます。

 皮膚症状としては、結節性紅斑けっせつせいこうはん毛嚢炎もうのうえんざ瘡ざそう様皮疹ようひしん、皮下の血栓性静脈炎けっせんせいじょうみゃくえんがみられます。結節性紅斑は隆起性で圧痛を伴う紅斑が四肢(主に下腿)に現れます。毛嚢炎様皮疹は、中心部に膿疱のうほうをもつにきび様の皮疹が前胸部、背部、頸部けいぶなどにみられます。血栓性静脈炎は下肢に多くみられ、皮下静脈に沿った発赤、圧痛と周囲の浮腫(むくみ)が主な症状です。

 また、針反応といって、採血後など針の刺入部が24~48時間後に発赤や毛嚢炎様発疹を示す皮膚の過敏反応がみられる場合があります。陰部の潰瘍は、男性では陰嚢いんのう部、女性では陰唇いんしん部に好発し痛みを伴います。

 眼の病変は前部ぶどう膜炎が特徴で、典型例は前房蓄膿ぜんぼうちくのうを伴う虹彩毛様体炎こうさいもうようたいえんです。眼の発作を繰り返すと視野の障害や眼圧の上昇を来します。網膜脈絡膜炎もうまくみゃくらくまくえんに進む例では視力低下の末、失明に至る例もあります。

 関節炎は急性、亜急性の発症で、膝、足関節に多く変形を来すことはありません。まれに持続性関節炎を合併します。男性ではまれに副睾丸炎ふくこうがんえんを合併することがあります。

 特殊型として、(1)腸管型、(2)血管型、(3)神経型があります。

(1)腸管の病変は回盲部かいもうぶに多く、潰瘍を作り腹痛、下血、便通異常を来します。

(2)血管の病変では、動脈や静脈の血栓性閉塞や動脈瘤どうみゃくりゅうがみられます。

(3)神経の病変としては、発熱や頭痛で髄膜炎ずいまくえん様症状を来す場合や、運動麻痺や失調症状を示す場合があります。精神障害や人格障害が徐々に進行する例もみられます。

 皮膚粘膜症状がひどい時や、腸管、神経の病変を伴う場合には、発熱などの全身症状が認められます。



検査と診断

 診断のための特殊な検査はありませんが、発作期は赤沈、CRPの高値、白血球、好中球の増多がみられます。また、IgDが上昇する場合があります。診断は、主症状(口腔内アフタ、眼・皮膚症状、陰部潰瘍)や副症状(関節炎、副睾丸炎、腸管・血管・神経症状)から総合的に行います。HLA‐B51陽性や針反応は診断の参考になります。


治療の方法

 軽症の皮膚・粘膜病変には局所ステロイド外用薬を使いますが、頻繁に症状が現れる場合は、コルヒチンを使用します。コルヒチンは諸症状に有効で、投与開始後1~2カ月で症状の軽症化や出現頻度の減少がみられます。

 眼症状のうち、虹彩毛様体などの病変が全眼部にとどまる場合は、局所的にステロイド点眼薬と散瞳薬を使用します。網膜脈絡膜炎では、急性眼底発作にはステロイドのテノン嚢下のうか注射、あるいは全身投与で速やかに発作を消退させます。発作の反復は視力低下につながるので、予防にコルヒチンを使用します。不十分であればシクロスポリンを使用し、それでも治療抵抗性の場合は抗TNFαモノクローナル抗体、インフリキシマブを検討します。

 神経、血管、腸管病変に対しては、早期からの積極的治療で発病後数年間の活動期に臓器障害が残らないように注意します。

 血管病変のうち炎症を伴う動脈病変には、高用量ステロイドにアザチオプリンやシクロホスファミドなどの免疫抑制薬を併用します。血栓性病変には抗血小板薬・抗凝固薬を併用することがよくあります。動脈瘤は、術後に縫合部の仮性動脈瘤形成など局所の再発が多いので、手術は慎重に考えます。

 腸管病変には、ステロイドとともにサラゾスルファピリジン、メサラジンを併用します。

 髄膜炎や脳炎症状を示す急性型中枢神経病変には、パルス療法を含む高用量ステロイドを使用します。慢性進行性の精神・人格障害は難治性ですが、メトトレキサートが有効な場合があります。

 非ステロイド抗炎症薬は関節炎、結節性紅斑、外陰部潰瘍に有効です。


病気に気づいたらどうする

 主症状が2つ以上あれば専門医(リウマチ・膠原病こうげんびょう科、眼科、皮膚科)を受診します。

 日常生活上の注意として、上気道感染、歯の治療、寒冷などの増悪ぞうあく因子や過労はなるべく避けてください。女性では月経の前後に増悪する場合があるので注意します。


執筆者(敬称略):鈴木 康夫

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出典:六訂版 家庭医学大全科

発行:株式会社法研

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