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特別連載番外編 第2回

DNAは人類の未来を変える!? DNA研究の最前線

特別連載番外編第2回

〜遺伝子検査の有用性と限界〜

誰でも簡単に受けられるようになった遺伝子検査。技術の向上にともなって盛り上がりを見せており、大きな可能性を秘めています。遺伝子検査を私たちの生活にどう役立てていけばよいのか、それによって私たちの生活はどう変わっていくのか、東京女子医科大学で単一遺伝子病の遺伝カウンセリング、検査、診療を行う遺伝子診療外来の菅野仁教授を招いたセミナーが2015年3月25日にヤフー株式会社で行われました。
菅野仁先生によるセミナー

「病気になる前に予防」するために遺伝子検査を活用

医療機関を介さずに、消費者へ直接提供される個人向け遺伝子検査をDTC遺伝子検査。唾液を採取し、ポストに投函するだけで自分自身の体質や健康リスクなどを明らかにすることができます。最近ではこの検査を受ける人が増えてきていると株式会社ジーンクエスト代表取締役社長の高橋祥子さんは話します。

「DTC遺伝子検査のメリットは、オーダーメイド医療に貢献できること、疾病のリスクを回避できること、また自分自身の適性を知ることです。一方デメリットもあり、知ることで不安になってしまうなどのリスク、差別の助長、疑似科学ビジネスの横行などが懸念されています。特に科学的根拠を明示せずに遺伝子検査でサプリメントを売りつける例なども報告されていますので消費者にとって正確な情報提供が大事だと思います。

DTC遺伝子検査を受けた方の動機を調べたところ、父がリウマチ、母が認知症など遺伝的な病気のリスクが不安だから最新の技術を試したい、生活改善のきっかけなどが多く挙がりました。今後、検査をする人が増えれば、科学的検証が進み検査結果の精度も上がります。健康食品、フィットネス、食事指導、スキンケアなどへ応用する可能性も大いに期待できます。近い将来は『病気になって医師にかかる』から、『病気になる前に予防する』が一般的になってくるのではないでしょうか」

たった4つの塩基の並びで遺伝子が決定
疾患リスクのある人には共通の並びが

まだ普及したばかりだからこそ、科学的根拠なしに高額な商品を売りつけるような業者などが国内でも出てくる可能性もまだ少なくはありません。だからこそ私たちは遺伝子検査を知り、その活用方法を考えていく必要があります。実際に各診療科と連携して遺伝子診療を行っている菅野先生の基調講演では、遺伝子検査をどのように役立てていったらよいのかのお話がありました。

「遺伝子を構成するのは、グアニン、シトシン、アデニン、チミンというたった4つの化学物質です。この4種類の化学物質の並びで遺伝子が決定していますが、その並びは人それぞれで異なります。例えばがんにかかる可能性がある人、薬の副作用が出やすい人などにはそれぞれ共通した遺伝子の並びがあります。それを解析し、リスクの有無、大小を調べるのが遺伝子検査です」

参加者からの質問に回答する菅野仁先生

がんになりやすい遺伝子を持っていてもその確率は100%ではない

例えば、国内三大死亡要因のひとつであるがんのうち、5〜10%が家族性腫瘍、つまり遺伝的な要因が関係しているといいます。

「乳がんや前立腺がん、大腸がんなどは遺伝的要因が大きいといわれていますが、遺伝性がん遺伝子変異を持っていてもがんの発症にはさらに体細胞変異が必要です。例えば両親のうち、父親ががんになりやすい遺伝子を持っていたとしても子どもに伝わる確率は約50%、さらにその後の人生の過程で遺伝子に変化が生じることでがんを発症します。乳がんのおよそ5〜10%は遺伝的要因が関係する家族性腫瘍だといわれています。乳がんなどを引き起こす原因のBRCA1という遺伝子を持つ人のうち生涯で乳がんを発症する確率は65〜85%、卵巣がんが16〜60%といわれています」(菅野先生)

つまり、がんになりやすい遺伝子を持っていたとしても、がんになる確率は100%ではなく、生活習慣などを改善することでそのリスクは軽減されるということ。遺伝子検査によって病気のリスクがわかっても、それを不安に思うのではなく生活改善に生かすことがより大切になってくるのです。

遺伝子検査はひとつの指標
生活習慣を改善するきっかけとして役立てる

「遺伝子検査を活用することで、もしがんを発症したとしても自分にあった抗がん剤を探すことで、治療効果を高めたり副作用を減らすこともできます。先ほどの数字で示した通り、遺伝子が体質や疾患発症リスクに与える影響は必ずしも大きくはありません。リスク因子をたくさん持つことで、病気の発症リスクは高くなりますが、それは遺伝的な要因だけでなく、環境要因、生活習慣なども大いに関係してきます。自分の遺伝背景を知り、生活習慣の改善などを心がけることで健康維持に役立てることができるでしょう。

そのために心がけてほしいのが、解析精度の高い会社の検査を受けること。検査精度が悪いと結果が違ってくることもあるのでどの会社の検査を選ぶかは慎重に決める必要はあります。また結果が出ても、生活習慣をどのように改善していくか答えはひとつではありません。遺伝子情報をもとにした健康設計はまだ新しい情報です。定期的に結果をバージョンアップし私たちの生活にもその都度対応しながら健康維持につとめることが今後大事になってくるでしょう」(菅野先生)

講師プロフィール
菅野 仁先生
菅野 仁先生
1982年日本大学医学部卒業後、1987年に東京大学大学院医学系研究科第一臨床医学専門課程(内科)修了。医学博士(東京大学博医第 645 号)
【現 職】
東京女子医科大学 輸血・細胞プロセシング科教授
東京女子医科大学附属遺伝子医療センター教授、副センター長
東京女子医科大学大学院医学系研究科先端生命医科学系専攻遺伝子医学分野教授
特定非営利活動法人 血液難病診療サポート 理事長
パネリストプロフィール
高橋 祥子さん
株式会社ジーンクエスト 代表取締役社長
1988年生まれ。2010年京都大学農学部卒業。2015年東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了。2015年東京大学大学院農学生命科学研究科博士研究員として在籍中。専門は分子生物学と統合オミクス。
2013年6月に株式会社ジーンクエストを創業し、DNAチップを使ったゲノム解析によって病気のリスクや体質に関するゲノム情報を知らせるサービスを展開中。

特別連載インタビュー記事

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