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脳出血のうしゅっけつ

Cerebral hemorrhage

どんな病気か

 脳出血とは脳内の血管が何らかの原因で破れ、脳のなか(大脳、小脳および脳幹のうかんの脳実質内)に出血した状態をいいます。そのために意識障害、運動麻痺、感覚障害などの症状が現れます。血腫けっしゅが大きくなると脳浮腫のうふしゅによって頭蓋内圧が高くなって脳ヘルニアを起こし、重い場合は脳幹部が圧迫されて死に至ります。

 近年、脳出血の死亡数は減ってきましたが、その最大の理由は高血圧の内科的治療が広く行きわたり、血圧のコントロールが十分に行われるようになったためと考えられます。また最近、脳出血は軽症化していますが、運動障害や認知症にんちしょうなどの後遺症で悩む患者さんが多いのも事実です。



原因は何か

 高血圧が原因で起こる脳出血が最も多く、全体の70%を占めます。血管の病変をみてみると、脳内の100~300μmの細い小動脈に血管壊死けっかんえしという動脈硬化を基盤とした病変ができ、これに伴ってできる小動脈瘤しょうどうみゃくりゅう(小さな血管のこぶ)の破裂が脳出血の原因になります。そのほか、脳動脈瘤のうどうみゃくりゅう脳動静脈奇形のうどうじょうみゃくきけい破綻はたん腫瘍内出血しゅようないしゅっけつ、脳の外傷、白血病はっけつびょうなどの血液疾患が原因になります。高齢者では血管の壁に老人性変化のひとつであるアミロイドが沈着して脳出血の原因になることがあります。

 高血圧性脳出血を部門別にみてみると、最も頻度が高いのは被殻ひかく出血(40%)と視床ししょう出血(35%)で、この2つが約4分の3を占めます。次いで皮質下出血(10%)、きょう(中脳と延髄えんずいとの間にある)出血(5%)、小脳出血(5%)、その他(5%)と続きます。


症状の現れ方

 一般的には頭痛、嘔吐、意識障害、片麻痺かたまひが多くの患者さんにみられます。出血部位および血腫の大きさにより症状は違います。慢性期になっても何らかの後遺症を示す患者さんも多くみられます。

(1)被殻出血

 片麻痺、感覚障害、同名性半盲どうめいせいはんもう(両眼とも視野の片側半分が見えなくなる状態)などが主な症状で、進行すると意識障害がみられます。優位半球ゆういはんきゅう(通常左半球)の出血の場合では失語症しつごしょうもみられます(図6)。

(2)視床出血

 片麻痺、感覚障害は被殻出血と同じですが、感覚障害が優位のことがあります。視床出血では、出血後に視床痛という半身のひどい痛みを伴うことがあります(図7図8)。

(3)皮質下出血

 頭頂葉とうちょうよう側頭葉そくとうよう前頭葉ぜんとうようなどの皮質下がよく起こる部位です。症状は、出血する部位に応じて違いますが、軽度から中等度の片麻痺、半盲、失語などがみられます。

(4)きょう出血

 突然の意識障害、高熱、縮瞳しゅくどう(2mm以下)、呼吸異常、四肢麻痺ししまひなどがみられます。大きな橋出血の場合は予後が不良です。

(5)小脳出血

 突然の回転性のめまい、歩行障害が現れ、頭痛や嘔吐がよくみられます。


検査と診断

 CTが最も有用で、発症後数分以内に高吸収域(血腫が白く写る)として現れ、3~6時間で血腫が完成し、約1カ月で等吸収域(脳組織と同じ色に写る)になり、やがて低吸収域(脳組織より黒く写る)になります。脳動脈瘤、脳動静脈奇形脳腫瘍のうしゅようによる出血が疑われる場合は、脳血管撮影が必要です。


治療の方法

 高血圧性脳出血の治療は、血腫による脳実質の損傷を軽くし、再出血や血腫の増大を防ぎ、圧迫によって血腫の周囲の二次的変化が進まないようにすることです。このため内科的治療としては、頭蓋内圧亢進ずがいないあつこうしんに対する抗浮腫薬の投与、高血圧の管理、水電解質のバランス、合併症の予防と治療が基本になります。外科的治療が必要かどうかの検討も同時に行います。

 血腫の増大は、発症してから数時間以内に約20%の患者さんにみられ、多くの場合は発症6時間以内に止まります。一方、脳浮腫は脳ヘルニアを起こして、予後に重大な影響を与えます。通常、脳浮腫は3日目から強くなり、ピークとなるのは1~2週です。抗浮腫薬としてグリセオールとマンニトールを用います。

 高血圧のコントロールは、脳出血の治療のなかで最も重要であり、また難しい問題でもあります。脳には、血圧の変動に対して脳の血流を一定に保とうとする自動調節能があることが知られていますが、急性期脳出血の場合はこの自動調節能が機能せず、脳の血流は血圧の上がり下がりに合わせて変動します。

 そのため急に血圧を低下させると脳血流量が減って組織を流れる循環が悪くなるので、降圧の程度は降圧薬投与前の血圧の80%くらいにするのが適当です。一般に、慢性期での降圧の目標レベルは治療を開始してから1~3カ月の間に14090mmHg以下とするのがよいとされています。

 脳出血に対して手術が適応するかの判断については、出血量が10ml未満の小出血または神経学所見が軽度な症状では、部位に関係なく手術適応はなく、意識レベルが深昏睡の症例も手術適応はないとするのが一般的な方針です。部位別では、被殻出血は意識レベルが傾眠から半昏睡で血腫量が31ml以上、小脳出血は最大径が3cm以上で進行性のものは手術適応があります。皮質下出血は血腫が50ml以上と大きく、意識レベルが傾眠から半昏睡の場合、手術が考慮されます。

 そのほかの脳出血の合併症として重要なのはけいれん発作、発熱、消化管出血、電解質異常、高血糖、下肢静脈血栓症かしじょうみゃくけっせんしょうなどで、それぞれに対する治療も行います。


病気に気づいたらどうする

 脳出血の患者さんでは、意識障害とともに呼吸障害を伴う場合が多くみられます。倒れた直後に注意しなければならないのは、吐物によって窒息ちっそくすることと吐物を誤飲することです。吐いた場合は麻痺側を上に、顔と体を横にして誤飲を防ぎます。救急車が来る前には、頭部を後屈させて下あごを持ち上げ、口を開けさせて気道を確保します。枕はあごが下がり、舌根ぜっこんが沈下しやすいので用いません。

 このような処置をして、患者さんをできるだけ早く専門の病院に運び、適切な治療を行うことが大切です。

 普段から血圧の高い患者さんに突然に起こる、上下肢における持続性で片側の脱力は、脳出血を含めた脳血管障害の可能性があるので、軽い場合でも神経内科、脳神経外科のある専門病院で精密検査することをすすめます。


執筆者(敬称略):北川 泰久

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出典:六訂版 家庭医学大全科

発行:株式会社法研

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