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急性気管支炎きゅうせいきかんしえん

Acute bronchitis

どんな病気か

 気管支は、線毛せんもうの生えた上皮と粘液を分泌する細胞(はい細胞)におおわれた空気の通り道です。ここを呼吸のたびに外界からのちりや微生物を含んだ空気が通過するわけですが、侵入したこれらの異物は、分泌された粘液にからめとられ、線毛の運動で、口から外へせきとともに痰として排出されます(図7)。

 微生物の感染により気管支粘膜に炎症が起こり、たんを伴うせきがみられる状態を一般的に気管支炎といいます。気管支炎の病態は微生物の感染のほかに、喫煙、大気汚染、あるいは喘息ぜんそくなどのアレルギーによっても起こります。

 肺炎でも痰を伴う咳が急に現れて発熱がみられますが、胸部X線写真上で肺に陰影が認められない場合に、気管支炎という診断が臨床的になされます。

 慢性の呼吸器の病気、たとえば慢性気管支炎やびまん性汎細気管支炎せいはんさいきかんしえん気管支拡張症きかんしかくちょうしょうなどの病気がもともとある場合には、慢性気道感染症の急性増悪であり、これは急性気管支炎とは異なる病態です。



原因は何か

 感染症としての急性気管支炎の原因としては、ウイルスがほとんどです。成人の場合はライノウイルス、インフルエンザ、パラインフルエンザ、アデノウイルスなどが原因になります。ウイルス以外では、マイコプラズマやクラミジアが原因になります。細菌が原因になることはまれです。

 呼吸器に慢性の病気のある人に、痰の増加や発熱が急に起こった場合の原因としては、ウイルスと細菌の両方が重要であるといわれています。この場合は、肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリスなどが主な原因細菌となります。


症状の現れ方

 急性気管支炎は急性上気道炎じょうきどうえん感冒かんぼう)などに合併し、気管支粘膜の炎症によって、発熱と咳、痰が症状として認められます。この症状は肺炎でもみられますが、肺炎の場合は、炎症は主に気管支よりもさらに末梢の肺胞はいほうで起こるので、胸部X線像で浸潤影しんじゅんえいと呼ばれる陰影が認められます。肺炎の場合には炎症が気管支にも及ぶことが多いので、気管支炎と症状だけから区別することは難しく、胸部X線検査が区別のために必要になります。

 痰が長く続いたり、膿性のうせいの黄色の痰がみられる場合には、細菌による感染症が疑われます。このような原因微生物の違いを推測することは、治療法の違いに結びつくために重要です。


検査と診断

 検査は、気管支炎の診断と原因微生物の診断の2つの目的で行われます。

 気管支炎は明確な診断基準(クライテリア)はなく、症状と肺炎の否定によって行われます。急激に痰と咳を示す患者さんでは、肺炎の否定のためには診察と胸部X線検査が必要です。聴診で、粒の大きな水泡音すいほうおん(湿性ラ音)主体で、肺野はいや末梢に雑音が聞かれず、胸部X線像でも陰影が認められなければ気管支炎と診断し、その発症が急性であれば急性気管支炎という診断名が下されます。

 原因微生物の診断のための検査は、急性気管支炎がウイルスによって発症することが多いため、あまり有用な方法はありません。ウイルス以外のマイコプラズマやクラミジアも同様で、一般の検査室で行われる細菌学的に迅速で有用な検査法はありません。血清学的診断法として、抗体価を測定する方法があり、最近、マイコプラズマでは迅速にIgM抗体を検出する方法が開発されましたが、気管支炎そのものは疾患が重症化することが少ないために、肺炎と違って気管支炎では使われることは少ないのが現状です。

 インフルエンザによる気管支炎は例外で、鼻腔や咽頭ぬぐい液から抗原を検出する迅速診断法が行われています。インフルエンザでは高い熱がみられ、高齢者や小児では重症化することもあり、かつ有効な治療薬があるために、迅速に検査が行われています。

 一方、細菌性の気管支炎として重要なものに百日咳ひゃくにちぜきがあります。長く続くがんこな咳の場合に疑われます。予防接種歴がない、あるいは罹患歴りかんれきがない場合はこれが疑われ、専用の培地(ボルデージャンク培地)で細菌培養を行い、確認します。

 インフルエンザ百日咳などの特殊な場合を除いて、原因微生物診断のための検査は通常は行われません。


治療の方法

 鎮咳ちんがい薬、去痰きょたん薬、消炎薬などが対症療法として使われます。

 原因微生物に対する特有な治療は、ウイルスが原因の場合、インフルエンザを除いて有効なものはありません。迅速診断法でインフルエンザAあるいはBと診断できた場合は、発症後48時間以内ならば両方の型ともにオセルタミビル(タミフル)やザナミビル(リレンザ)、A型にはアマンタジン(シンメトレル)が有効です。

 マイコプラズマやクラミジアは、周囲に同じような症状の人がいた場合に疑われる病原微生物で、マクロライド系(エリスシン、クラリス、クラリシッドなど)やテトラサイクリン系(ミノマイシン)が有効です。また、ニューキノロン系(クラビット、アベロックス、ジュニナックなど)の抗菌薬も有効です。

 細菌性の場合は、百日咳ではマクロライド系抗菌薬を選びますが、それ以外の場合には抗菌薬が臨床的に有効であるという根拠はありません。


病気に気づいたらどうする

 急性気管支炎のうち、インフルエンザ、マイコプラズマ、クラミジアが原因の場合には、有効な抗菌薬治療があります。長期に続くえるような咳の場合は百日咳が疑われます。激しい咳と痰とが数週間続く場合には気管支結核が重要な鑑別疾患になるので、専門の医療機関への受診が必要です。


執筆者(敬称略):朝野 和典

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出典:六訂版 家庭医学大全科

発行:株式会社法研

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